企業と従業員の間のトラブルと聞くと、過重労働やパワハラ、給料未払いなどを思い浮かべます。しかし、労働問題はそれだけではありません。「入社したら面接時に提示された待遇と違った」「不当な理由で減給や降格処分を受けた」といったトラブルも少なくないのです。こうした問題が起きたとき、労働者はどのように対処すればいいのか? 今回から2回に分けて「減給・降格トラブルの対処法」を紹介します。第1回目は、あるシステムエンジニアの実例から減給・降格トラブルを考えてみます。
有名転職サイトで見つけた好条件の企業
2017年当時、渡辺悟さん(仮名、41歳)は15年のキャリアをもつシステムエンジニアでした。それまでは業務委託でプロジェクト単位の仕事をしてきましたが、子どもが生まれたのをきっかけに「生活を安定させたい」「正社員として落ち着いて仕事をしたい」と考えるようになったそうです。
「そんなとき、転職サイトで『これだ!』と思う会社を見つけました。自分の希望通りの職種で、年収800万〜1200万円と条件も良かった。絶対にこの会社に行きたいと思って、すぐに応募しました」(渡辺さん、以下同)
その会社のことは、仮に「A社」としておきます。
A社が募集していたのは、老朽化した社内システムの改善を行うチームを統括するマネージャーでした。渡辺さんはエンジニアとして豊富な経験があるほか、入社試験の成績も良かったこともあり、社長面接では「あなたに期待している」とかなりの好条件を提示されたそうです。
「月給85万円、年収に換算すると1020万円の高待遇でした。また、『すぐに終わらせるべき仕事がなければ残業もない』という話でしたね。このとき、東証一部上場企業のCTO求人にも応募していて、社長面接で直々に内定の意向まで頂いたのですが、その場で断りました」
こうして渡辺さんは希望通りにA社に転職することになりました。ところが、入社して5日目、A社の経営陣との間で思いもよらないトラブルが起こるのです。