今年4月より、中小企業でもパワハラ対策のための相談窓口設置が義務付けられました。社内でトラブルが起きたときに相談できる機関を設けるという法律ですが、実際にどれだけの企業が対応しているかは未知数です。なかには、専門的な知識を持たない人が窓口を担当するなど、形式上の対応で済ませる会社もあるようです。
そもそも、労働に関する法律は義務教育で学んだわけでもないため、「よくわからない」という感覚の人が多いのではないでしょうか。そんな人に向けて、労働や経理に関する知識が学べる「労働トラブル相談士」という資格講座が、2021年に始まりました。今回は、この講座で講師を務める労働者側社労士の須田美貴さんに、労働者が正しい知識を身につけておくことの重要性と、この資格のメリットを伺います。
→公式認定講座のお申し込みはこちら
※特典の適用は、上記のリンクよりお申込み・ご入金後、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
→クレア(CHREA/キャリア人財育英協会)公式ページはこちら
4月から中小企業にも設置義務化された“相談窓口” その懸念点とは
2020年6月に「パワハラ防止法」が施行され、今年4月には中小企業でも相談窓口の設置が義務化されました。この法律は、実際にどれほどの効果をもたらしているのでしょうか。

須田美貴さん(社会保険労務士) 正直なところ、すべての中小企業が相談窓口を設置しているかは疑問です。なかには、そもそもこの法律を知らなかったり、人材不足により窓口を設置できていない企業があるのではないでしょうか。
実際、私のもとに労働トラブルの相談に来る人に対して、「社内に相談窓口は設置されていますか」と尋ねても、「ない」と答える人がほとんどです。おそらく、パワハラ防止法には罰則規定がないため、わざわざ対応に動かない企業もあるでしょう。
それに、建前上“相談窓口”という役職を設けるだけで、実際にトラブルに対応する力のある人がどれだけいるかも懸念されます。特に、相談窓口を社長や役員が兼任しているケースでは、社長や役員自身がパワハラを行っていた場合、まともな解決策が見いだせる可能性は限りなく低い。最悪の場合、パワハラが常態化していても、相談窓口さえ置いておけば法的には問題ナシ、ということになっていても不思議ではありません。
4月の相談窓口設置義務については、相談可能な外部機関と連携することも認められています。この方法に関して、懸念される点はありますか。
須田美貴さん 社内の人間関係が複雑な場合などに、外部機関に頼るメリットは大きいでしょう。ただ、多忙な会社員が、時間とお金を捻出して相談に行くのは労力が必要ですし、悩みの程度によって「わざわざ外部の人に相談すべきことなのかな…」と、心理的ハードルを感じる人もいるのではないかと思います。