会社に対抗する一番有効な方法は「書類」に残すこと

前述のように、労働者であればこうした降格・減給トラブルに直面するリスクは誰にでもあります。そこで知っておきたいのが、降格・減給トラブルの対処法です。
渡辺さんは経営陣から会議室に呼び出され、「減給」「自主退職」のどちらかを選べと迫られました。こういうケースの場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
大石弁護士は「一番いい方法は、会社側とやり取りする様子をスマホで録音することです」と言います。
「その場合、会社側に断らずに録音して大丈夫です。刑事事件では証拠集めのプロセスが問題になることがあり、それによってその証拠が使えないケースも出てきますが、民事ではその点が問われることはほとんどありません」
もうひとつ重要な証拠となるのが「文書」です。なかには降格・減給処分を口頭で伝え、その場で従業員に承諾させようとする悪質な会社もあります。実際にA社はその場で「減給」「自主退職」の二択を迫ってきました。
こういうケースでは、絶対にその場で即答せず、「会社側の要求を文書に残させることが大切」と言います。
「会社側はその場で返事をしろと迫ってくるでしょう。しかし、その圧力に負けて即答せず、必ず『よく考えたいので文書でください』と会社側に伝えてください。
裁判所や弁護士が一番困るのが『言った、言わない』の水掛け論です。だからこそ、こういった労働問題では、文書にさせたり録音したりすることで、会社の要求を証拠として残しておくことが大きなポイントになるのです」
さらに、パワハラや長時間労働でうつ病などを発症してしまった場合も、医師の診断書が重要になるそうです。
「そして医師の診断を受ける場合は、必ずカルテに残してもらってください。というのも、医師のなかには問診の内容を詳しくカルテに残さず、症状だけ記入する人もいるからです。
そうなると、裁判になってカルテを取り寄せたとき、会社側からカルテに未記入だという点を突かれる場合もあります。カルテに残してもらうのは非常に重要です」
ちなみに、裁判所は職場の同僚の証言を重要視しないそうです。仮に今回の渡辺さんと同じような労働問題に直面した場合は、証言よりも録音、録音より文書の証拠を残すということを覚えておけば役に立つかもしれません。
(取材・文/清談社)